少し前に書いたように、私はフルーティシプレというタイプに分類される香りが好きです。これから1つ1つについて書いていこうと思っています。
まずフルーティシプレの代名詞の先述のミツコ(ジャック・ゲラン、1919年)ですが、シプレの代名詞はおろか香水の代名詞的な存在であるほど有名な香りということで、私があえて何か書く必然性をあまり感じません。
- トップ:ベルガモット ジャスミン バラ シトラス
- ミドル:ピーチ ジャスミン ライラック ローズ イランイラン
- ベース:オークモス スパイス シナモン ベチバー アンバー (fragranticaより)
ただ、少し調べたら香りが変わっていたのは2009年から2013年までの間に製造されたもので、それ以降は元に戻っているようです。私の手元にはその変わったものがまだありますので、機会があったら現行品と比較してみようと思います。
ミツコの香りはミツコの香り、としか言いようがないものなのですが、古い香水にありがちのいわゆる「おばあちゃんの鏡台」の香りではありません。それどころか、生々しい現役の女の香りです。端正な美しさと、触れたら落ちそうな危うさが同居しています。
その一方で、極めてバランスの取れた、これ以上何を足しても何を引いてもその完璧さは壊れてしまうといった完成度の高い香りです。あの毒舌のルカ・トゥリンでさえ手放しで褒めているというクラシックな香りは、ミツコを置いて他はない(ノンブルノワールももしかしたらそうかも知れません)と言っていいと思います。
ミツコはそれほど完成度が高いためか、毎日付けても「自分の香り」にはならず、せいぜい「ミツコをつけた人の香り」にしかならない感じです。
手懐けることのできないくらいプライドが高い一方で密かに誘う、手が届かなそうで届きそうな、ミステリアスな女性。それがミツコの香りです。
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