小判

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高校は都内私立女子校に通っていたというと、何故か箱入り娘だったと誤解する人がいるのですが、そうではなくて積木崩し世代というのか転居先の地元公立中学が当時はいわゆる荒れていた学校だったので、親が安全そうな中高一貫教育のところに中学3年の時にねじ込んだ、というのが事実です。

お嬢様学校ではなかったですが進学校でもなく、そこそこ平和というのかのどかな女子校だったので、馴染めなかったのだと思います。

その中で、1人だけ異色な先生がいました。数学の先生だったのですが、とにかく生徒を立たせる人で、テストが不出来だった・質問に答えられなかった・私語をした等様々な理由で立たせていました。2〜3名を除いて全員が立っていたこともありました。毎回テストをしたりと厳しいので、クラスメイトからは嫌われていました。当時のそののんびりした女子校では、そんな先生は珍しかったのです。

その先生が数学を愛しているということはよく私には分かったのですが、どんな教え方をしたかというと、のっけから私の授業で学ぶ数学の勉強をするならホフスタッターの『ゲーデル、エッシャー、バッハ』を読みなさいと言うような人でした、と言えばわかって貰えるでしょうか。

電話帳のような(分厚い電話帳というものは今はもうないと思うのですが、当時は厚みのある書籍はそう形容されていました)その書籍を大きな書店に行くたびに目にしていながら、私が実際に購入したのは20周年記念版が出版された時だったと思います。そして、まだ通読出来てはいません。

当時の私にはまさしく猫に小判というのか、無縁なものでした。

ですが、その先生に教わった内容は忘れてしまっても、その姿勢を忘れることはないでしょう。

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