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私はあまり児童書は読まないのですが、メアリー・ポピンズだけは子供の頃から好きでした。

メアリー・ポピンズは、言ってみれば魔法のような力があって子供の夢を叶えてくれる存在ですが、私が好きだったのは夢を叶えてくれるところではありませんでした。

メアリー・ポピンズは基本的にツンとしたぶっきらぼうな人で、言葉も皮肉が効いていて辛辣(毒舌と言っていいかも知れません)なのですが、バンクス家の子供たちに対する愛情というものが読んでいて伝わって来ます。子供たちの両親も登場するのですが、両親よりずっと本物の愛情を持って子供たちに接していることがわかるように描かれています。

普段は高圧的で子供をびしびし躾けるメアリー・ポピンズなのですが、時々ふと思いついたように子供たちを夢や魔法の世界で楽しませます。そこでは人が変わったように優しい感じです。そして、魔法の世界で子供たちが困った状況になると助けに来ます。魔法が解けたあとには、何もなかったかのように元通りの高圧的な態度に戻り、子供たちに何もなかったかのような発言をして、さっきまでの体験は気のせいだったように思わせるけれども、実際に起こったことだという証拠が残されています。メアリー・ポピンズに描かれた数々の挿話は基本的にそんな展開です。

後になって知ったのですが、作者のP.L.トラヴァースは父親がアルコール依存の家庭で育ったそうで、トラヴァースというペンネームは父親のファーストネームです。父親は彼女が7歳の時に亡くなったそうです。

おそらく彼女はいわゆるアダルトチルドレンで、父親をイメージしてメアリー・ポピンズを創造したのではないかと思います。

メアリー・ポピンズの二面性は、父親が酒に溺れている時(素っ気ない)と、しらふの時(優しい)の違いです。

何度も予告なしにバンクス家に現れてやはり予告なしに姿を消すところは、亡くなった人の亡霊のような感じです。

映画化された「メリー・ポピンズ」(1964年)では、まったくと言っていいほど原作とは性格が違っています。映画では、ひたすら明るく楽しい存在なのです。

おそらく映画しか見たことのない人は、メアリー・ポピンズをドラえもんのような存在だと思っているのではないかと思いますが、原作のメアリー・ポピンズには陰があり、ドラえもんのような「友人」ではなくて明らかに「親」の位置にある人です。

私が好きになる人や物事は、親子関係に問題がある人に関わるものが多いようです。

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